熱湯が起因する天ぷら油火災にご注意
- 過去に本市で発生した火災事例を参考に燃焼実験を行いました。
- 「天ぷら油火災」と言えば、“天ぷら油が加熱され発火するもの”と考えがちですが、加熱状態でなくとも何らかの要因により水分を含む物質が入れば、天ぷら油の粒子が飛び散り火災になる可能性がありますので、天ぷら油が置かれている周囲で料理などするときは十分に注意してください。
実験内容
- 余熱状態(コンロ消火状態)の天ぷら油にヤカンの湯が入った場合、火災は起こり得るのかを検証します。
- この実験は、過去に市内で発生した火災事例をもとに行うこととしましたが、当時の天ぷら油の加熱時間や油の温度が分からないため、油の温度を100℃、150℃、180℃、250℃に設定して行います。
- 実験には2台のカセットコンロを使用しましたが、2台のバーナーは一般的な2口ガステーブルのバーナー部分の間隔である32cmから33cmとし、ヤカンの水はほぼ満タン、天ぷら油は500mlとしました。
- また、本市で発生した火災で使用されていたヤカンと同形状の物と、別型(ケトル型)の2つを用意し、形状による吹きこぼれ方の違いも比較します。
実験の順序
- 天ぷら油温度が約100℃の場合
※火災現場と同形状のヤカンと別型のヤカンを使用する。
- 天ぷら油温度が約150℃の場合
※火災現場と別型のヤカンを使用する。
- 天ぷら油温度が約180℃の場合(通常天ぷら等を揚げる温度)
※火災現場と別型のヤカンを使用する。
- 天ぷら油温度が約250℃の場合(発煙点の温度)
※火災現場と別型のヤカンを使用する。
実験結果
天ぷら油の温度が100℃前後の場合

1 火災現場と別型のヤカン

2 火災現場と同形状のヤカン
結果
- 火災現場と別型のヤカンは、注ぎ口から天ぷら油に熱湯が吹きこぼれたが、量が少なく少量油が跳ねる程度で燃焼現象は生じなかった。
- 火災現場と同形状のヤカンは、蓋から吹きこぼれたのみで、天ぷら油に変化は生じなかった。
天ぷら油の温度が約150℃の場合


結果
- ヤカンの注ぎ口から熱湯が天ぷら油に入ったため油及び熱湯が跳ね上がり、油がヤカン側のガス火で着火したが、ヤカン周辺に炎が瞬間的に上がったのみであった。
天ぷら油の温度が約180℃の場合


結果
- 天ぷら油及び水が跳ね上がり、ヤカン側のガス火で着火したとたん大きな火炎となった。
- テーブルから2m程度火炎が上昇し、約12秒燃焼し続けた。
天ぷら油の温度が約250℃の場合


結果
- 天ぷら油及び熱湯が跳ね上がり水蒸気が立ち上った。
- ヤカン側(遮蔽アルミ周辺)で着火が確認でき、次の瞬間3m程度大きな火炎が上昇、約15秒燃焼し続けた。なお、遮蔽アルミが一部溶融した。
実験の考察
火炎形成
- 各実験をとおして言えることは、当然ながら天ぷら油の温度が高いほど火炎が強い。
- 火炎が発生する理由として、跳ね上がった細かい粒子の天ぷら油がヤカン側のガス火に接触、油の粒子が細かくなっていたため一瞬のうちに引火点及び発火点を越え着火したものと考えられる。
- ヤカン側のガス火で着火すると連鎖的に天ぷら油の粒子に燃え移るため、跳ね上がり量が多い高温の場合は大きな火炎が発生すると考えられる。
- 天ぷら油の跳ね上がりについて、180℃以上の場合、高温水が天ぷら油の熱で水蒸気爆発を起こし、その爆発力で天ぷら油の粒子が空気中に跳ね上げられると考えられる。
火災危険
- 今回の実験条件でこのような実験結果となっただけであり、条件が違えば結果が異なる。
- 天ぷら油の量、ガスの強さ(家庭用ガスコンロの方が火力が強い)、沸騰した湯の吹きこぼれる量、鍋の形状などによっても着火(燃焼)の状況は異なると考えられる。
- 以上のことから、低い温度の天ぷら油でも着火する可能性が低いとは言えず、付近に火源があれば余熱状態の天ぷら油に沸騰した湯が入り油の粒子が飛び散ると天ぷら油火災につながる可能性がある。