令和7年度市政運営方針
本日ここに令和7年第1回定例会を迎えるにあたり、市政運営に関する私の基本的な考え方を申し述べます。
昨年は、日本人選手が世界という大きな舞台でめざましい活躍をされました。メジャーリーグでは史上初の50本塁打、50盗塁を達成し、ナショナルリーグにおいても、本塁打王と打点王を獲得した大谷翔平選手の偉業は、私たちに大きな感動を与えました。また、パリオリンピックでは、58個という過去最多のメダル数を獲得した東京オリンピックに次ぐ45個のメダルを獲得し、パラリンピックにおいても過去4番目となる41個のメダルを獲得するなど、世界での日本人選手の活躍が、私たちに希望と活力を与えてくれました。
政治・経済面におきましては、昨年10月に実施された衆議院議員選挙を経て、石破茂氏が内閣総理大臣に就任し、約30年ぶりの少数与党政権を担われることとなりました。アメリカのトランプ大統領の再選や、いまだ終結には至らないロシアによるウクライナへの侵攻、混迷が続いている中東情勢など、世界は激動しており、日本に引き続き大きな影響を及ぼしております。物価につきましても、過去数十年と比較して非常に大きな上げ幅で推移しております。また、少子高齢化社会の進展と、深刻な人手不足に多くの企業も悩まされております。賃金上昇の機運も徐々に高まっておりますが、中小企業にとってはその財源確保が厳しく、経営を圧迫する要因ともなりえます。こうした物価高騰・労働力不足・賃金上昇という大きな課題に、国はまさに対応を求められているという状況です。
そのような中、国は、昨年の11月22日に閣議決定された「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」を踏まえ、まず低所得者支援として、令和6年度における個人住民税均等割非課税世帯に対し、一世帯当たり3万円を給付するとともに、その対象世帯の世帯員である18歳以下の子ども一人当たり2万円の給付を決定しました。この給付金は2月21日より、対象世帯に対して順次支給を開始しております。加えて、本市の独自施策として住民税均等割のみ課税されている世帯も対象としており、3月14日以降、いち早く支給できるよう、手続きを進めてまいります。
また、国からの物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金を活用し、4月25日より25日間、キャッシュレス決済ポイント還元キャンペーンを実施いたします。より多くの市民の皆様に恩恵を受けていただけるよう十分な周知を行い、実施に向け取り組んでまいります。
本市の人口動態につきましては、出生数が令和4年から3000人を切る状態で、令和6年は2835人となっております。国の出生数減少率と比較しますと、若干緩やかではあるものの、令和6年の死亡者数が6442人であることを踏まえますと、自然増減は国と同様の傾向になることも想定しなければなりません。一方、本市の社会増減については、令和4年より転入超過が継続しております。本市の住民基本台帳・人口動態によると、令和6年も引き続き転入超過が見込まれており、この流れを止めることなく、さらなる増加につなげていくことが重要です。
石破内閣は昨年10月、「新しい地方経済・生活環境創生本部」を設置し、人口が減少するという事態を正面から受け止めた上で、人口規模が縮小しても経済が成長し、社会を機能させる適応策を講じていくため、「地方創生2.0」の起動を発表し、今後10年間集中的に取り組む基本構想を、今年の夏に取りまとめる予定です。人口減少は、国家レベルの課題であり、国の包括的な対策が求められます。基礎自治体としてできることは限られてしまうかもしれませんが、地域の特性を活かしながら、国民に一番身近な行政機関として、市民の意見を反映した効果的な施策を展開してまいります。

東大阪市第3次総合計画で定めた3つの重点施策の取り組みについて

第1の重点施策「若者・子育て世代に選ばれるまちづくり」
令和6年度よりスタートした第2次実施計画の目玉である「次世代への投資」と「子どもファースト」施策に関連する事業を中心に、申し述べます。
私が5期目のマニフェストとして掲げておりました5つの「次世代への投資」項目についてであります。0歳児から2歳児の保育料無償化につきましては、待機児童の増加、保育士の確保、施設の受け入れ体制、今後の出生数の減少など、保育事業者や、市民の皆様からもご意見等をうかがいながら多角的に検討を行いました。結果、0歳児から2歳児の保育料無償化を同時にスタートさせた場合には、ハード、ソフト両面における受け入れ体制の観点、また、令和6年5月の育児・介護休業法と次世代育成支援対策推進法改正により、今後ますます育児休業の取得推進が見込まれるなどの要素を踏まえ、すべての子育て世帯への支援という観点から、まずは令和8年度より2歳児の無償化を実施いたします。2歳児の無償化実施に伴い、一時的に待機児童の発生が想定されますが、全国的な少子化の中、将来的な需要と供給のバランスを見込み、既存の社会的資源を活用した、一時的な需要増への対応を進めてまいります。
次に、0歳児から2歳児の在宅子育て家庭への支援につきましては、令和8年度以降の2歳児の保育料無償化とあわせて在宅子育て家庭への支援の強化を行います。ニーズの高い一時預かり事業の拡充につきましては、無償化に伴う待機児童対策とあわせて、リフレッシュ型・就労型ともに受け皿の拡充を進めてまいります。昨年の7月から試行的に始めている「こども誰でも通園制度」につきましては、令和7年度に制度化されましたが、令和8年度の本格実施に向けて多くの課題が山積しており、国において継続して協議が行われております。今後の国の動きを注視しながら、令和8年度の本格実施に向け準備してまいります。
学校給食の無償化につきましては、令和7年度からは小学1年生から小学4年生の給食無償化を実施します。これにより、小学校、中学校のすべての学年を対象とした学校給食無償化が実現します。子育て世帯の経済的負担の軽減と、質も量も落とすことなく安全で安心なおいしい給食の提供に今後も努めてまいります。
市内小中学校の修学旅行無償化につきましては、令和9年度の修学旅行対象者からの実施に向け、制度構築を進めてまいります。無償化をきっかけとして、今後の社会情勢を踏まえた修学旅行の考え方や、教職員の働き方改革などの諸課題をあわせて整理しながら、実施に向けて取り組んでまいります。
最後に、塾代助成についてでありますが、貧困の連鎖を断ち切るため、生活困窮世帯の中学生に対する支援として、令和9年度よりまずは学習塾に限定した助成制度の実施に向け、制度構築を行ってまいります。
次世代への投資にかかる事業と合わせまして、本市の子ども施策に関わる計画や条例の策定に向けた取り組みを進めてまいります。まず、子どもの権利に関する条例でございますが、国連が1989年に採択した子どもの権利条約をもとに、基本的権利の保障と健全な成長の支援を目的として、子どもの意見聴取の手法等も検討しながら、令和9年度までの制定をめざして取り組んでまいります。
次に、市町村こども計画については、こども基本法第10条に計画策定が努力義務として規定されており、こども家庭庁が示す策定ガイドラインでは、各法令に基づくこどもに関する計画等を一体のものとして策定することが求められております。国のこども大綱、大阪府のこども計画を踏まえ、本市においても市町村こども計画の策定を進めてまいりますが、まずは子ども・若者育成支援推進法に規定されている子ども・若者計画について令和7年度をめどに策定を進めてまいります。

第2の重点施策「高齢者が活躍するまちづくり」
いわゆる「団塊の世代」のすべての方が、本年75歳以上となられ、今後ますます認知症の前段階である軽度認知障害MCIの方の増加が見込まれます。研究機関の調査では、15年後には65歳以上の高齢者の3.3人に1人が認知症、もしくはMCI状態になると予測されております。昨年、市内施設において認知機能のスクリーニングをモデル的に行ったところ、参加者の中に、認知症やMCIの疑いのある方が一定数おられました。MCIにつきましては、早期に認知症予防策を講じることで、認知機能の改善や、認知症への移行を遅らせることが期待できるため、早期発見・早期支援に資する事業、ICTを活用した認知症予防事業に取り組んでまいります。
介護予防事業につきましては、令和4年度から6年度にかけて、前期高齢者、特に男性など介護予防に関心が薄い層をターゲティングした介護予防プロジェクト「トルクひがしおおさか」を実施してまいりました。結果、対象となる方々に多くご参加いただき、当初の目標を達成するとともに、講座終了後も参加者によるグループ活動が自主的に行われるなど、継続的な介護予防と新たな地域活動の素地にもつながりました。あわせて、介護給付費削減という副次的な効果も考えられることから、令和7年度以降につきましても、これまでの実績と課題を踏まえながら、より多くの対象者へと拡充してまいります。
さて、いよいよ4月13日から2025年日本国際博覧会が始まります。「いのち輝く未来社会のデザイン」は、一人ひとりが、自らの望む生き方を考え、それぞれの可能性を最大限に発揮できるよう、その生き方を支えるための持続可能な社会を皆で考えデザインする、という意味が込められております。人生100年時代と言われて久しいですが、その長い人生をいかに元気に、いかに幸せを感じながら最後まで全うできるかが重要となります。「一生勉強 一生青春」という、書家であり詩人の相田みつをさんの言葉は、高齢だからとあきらめてしまうのではなく、日々学び、さまざまな活動を続けることで、体は年を取っても、心と精神は常に柔らかく若々しくあり続けることができる、という意味が込められております。介護予防の視点からもリカレント教育や生涯学習の重要性を、とりわけ高齢者の方々にも意識をしていただきながら、高齢者のウェルビーイングの実現に取り組んでまいります。

第3の重点施策「人が集まり、活気あふれるまちづくり」
本年開催される万博には、最終的に約100社の市内企業が出展や会場整備、運営、協賛などさまざまな形で参画することとなります。4年前に開催されたドバイ万博では、多くの企業や国々が参加し、ビジネスマッチングの機会が数多く提供され、市場の拡大や国際的なブランド認知度の向上にも寄与したといわれております。このビジネスチャンスを逃すことなく、市内企業の情熱とチャレンジ精神、高い技術力を世界へと発信してまいります。同時に、世界中から大阪を訪れる観光客が、本市を訪れる契機にもつながることから、東大阪ツーリズム振興機構が主体となり、大阪観光局や民間企業等とも連携して本市の観光スポットなどの魅力発信を効果的に進めてまいります。
国は、これまで車中心だったまちなかの公共空間を、人々が居心地良く過ごせる場所、まちなかの魅力をつなぎ合わせる場所として見つめ直し、再定義するという考え方にシフトしております。多様な人々の集積、交流、滞在に焦点を当てる施策展開を、国や地方も取り組みはじめています。本市においても、居心地の良い空間づくり事業として、JRおおさか東線と近鉄奈良線・大阪線が交差する河内永和駅前と俊徳道駅前の駅前交通広場を活用し、人工芝や噴水、ミストなどを設け、にぎわい集える場としてさまざまなイベントが催されています。俊徳道駅前において昨年末に開催されたクリスマスマーケットでは、市職員の工夫が凝らされたイルミネーションが煌めき、地域の皆様にとても喜ばれました。まちづくりには、地域に暮らす人々のウェルビーイングのため、多様な人が共存し、多様な使い方ができるよう、余白の要素を取り入れることが大切です。このことを念頭におき、市内の既存ストックの活用と、大阪モノレールの南伸事業においてかたちづくられる3つの駅前交通広場においても、人々の多様な活動を通して他者やまちとのかかわりがうまれ、にぎわいが創出できるような取り組みを進めてまいります。
また、令和6年度より行っている八戸の里公園の整備につきましては、令和7年度中に整備が完了いたします。改修にあたり、地元の自治会や愛護会との対話に加え、近隣の小学校に通う児童を対象として、遊具についてのアンケート調査を実施し、児童の意見を反映いたしました。公園の持つ魅力をさらに活用し、あらゆる世代が居心地の良い空間として集える公園へとリニューアルいたします。

3つの重点施策の着実な推進をはかるための、行政が取り組む7つの分野別施策

分野別施策1.人権・共生・協働
人権とは、生まれながらにしてすべての人が持つ最も基本的な権利であり、すべての人に平等に保障されるものです。人権尊重のまちづくりを推進するためには、私たち一人ひとりの意識と行動によって、積極的に人権課題の解決に取り組まなければなりません。今般、子どもの権利に関する条例の制定を進めてまいりますが、未来社会を担う存在である子どもたちの成長と発展を支えることは、私たち大人の責任であり使命であることを認識し、子どもの意見に丁寧に耳を傾け、真摯に取り組んでまいります。
本年は戦後80年という大きな節目の年となります。しかし、世界では、依然として戦争や紛争が勃発しており、我が国においては北朝鮮からのミサイルの脅威と直面しています。平和の尊さ、戦争の悲惨さを、今を生きる私たちが次世代へ語り継ぐことが必要であり、非核「平和都市」を宣言した本市においても、平和意識の普及・高揚のため、引き続き啓発活動を進めてまいります。
男女共同参画センター・イコーラムにつきましては、令和6年度より新たな指定管理者となり、男女共同参画について考えることのできる身近な拠点施設として親しまれるよう、工夫しながら認知度の向上に努めております。施設内のフリースペースにおいて、中高生が複数人で勉強している姿がよく見られることから、令和7年度より比較的空いている子ども室を自習室として活用し、子どもたちが訪れやすい雰囲気づくりに努め、気軽に、男女共同参画について触れる機会を創出してまいります。
多文化共生につきましては、令和4年度より、小学生を対象としてカラフルコミュニケーションを実施してまいりました。この事業は文部科学省からも先進的な取り組みとして高い評価を受けており、今まで約45か国の人々と交流を果たすことができております。令和7年度は万博会場において、特別にカラフルコミュニケーションフェスティバルを開催し、本市の児童が国内だけでなく、万博を訪れる海外の方との交流を通じて、多文化共生にかかる資質を高めるのはもちろんのこと、本市の子どもたちの取り組みを世界に向けて発信してまいります。

分野別施策2.子ども・子育て
近年、子どもや子育てをめぐる環境は日々刻々と変化しており、課題も一層複雑になり、多様化が進んでおります。国においては、これまで複数の省庁に分かれていたこどもや家庭に関する政策を、より一元的に推進し、効果的で包括的な支援を提供するため、令和5年4月にこども家庭庁を創設し、「こどもまんなか社会」の実現をめざした取り組みが進んでいます。本市においても、令和7年3月に第3期東大阪市子ども・子育て支援事業計画を策定し、すべての子どもがすこやかに育ち、また、安心して子どもを生み育てることができるよう、質の高い教育・保育の提供と子育て支援の充実を図ってまいります。
保育士の確保策につきましては、昨年より就職フェアの開催月を年度当初に変更したことにより、採用人数が大幅に増加しました。令和7年度も4月に就職フェアを開催し、SNSを活用した広報や、保育士養成校への働きかけについて、広域でPRを行うなど、引き続き保育士確保の強化を行ってまいります。
すべての妊産婦、子育て世帯、子どもへの一体的な相談支援を行うこども家庭センターの設置につきましては、子育て世代包括支援センター(はぐくーむ)と、子ども家庭総合支援拠点(子ども見守り相談センター)の機能を十分に発揮し、一体的な相談支援ができる最適な体制づくりが必要です。母子保健と児童福祉それぞれの課題を整理し、関係部局において協議を重ねながら、まずは令和8年度をめどに、こども家庭センターをスタートできるよう検討してまいります。そして児童相談所が設置される時期を見据え、児童相談所とこども家庭センターを一体的に運営し、切れ目のない新たな子ども家庭支援体制を構築できるよう、準備を進めてまいります。

分野別施策3.教育
本市立学校の不登校児童生徒数は、令和4年度以降、1000人を超える状況が続いています。令和7年度につきましては、不登校児童生徒の学びの場を確保する観点から、校内教育支援ルームの設置や支援員の増員等、体制の充実を図ります。ふれあいオンラインルームにおけるメタバース等のデジタルを活用した取り組みとともに、不登校が生じないような魅力のある学校づくりや、早期発見と早期の対応、長期化するケースへの対応等、不登校の段階に応じさまざまな施策の充実に取り組んでまいります。
文部科学省の中央教育審議会が示している、「令和の日本型学校教育」は、すべての子どもたちの可能性を引き出す個別最適な学びと、協働的な学びの実現をめざしております。これまで進めてきた小中一貫教育を継続的に推進するとともに、「令和の日本型学校教育」に基づき、学校教育に係る諸課題に対し、横断的な施策や取り組みの企画、調整等を行うため、教育委員会事務局において、新たに「みらい教育室」が設置されます。特に、少子化による地域ごとの小中学校の学校規模や、今後の施策のあり方等が課題となっており、児童生徒の教育環境改善の観点から、検討を本格化させてまいります。
「GIGAスクール構想」により、令和3年度から児童生徒へ1人1台のタブレット端末を配備し、ICT環境の整備を図っております。AIドリルの活用による学習状況やレベルに応じた教育により、個別最適な学びや協働的な学びの実現を進めてまいりました。この度、タブレット端末が更新時期を迎えることから、これからの予測不能な時代を生きる児童生徒が、ICTを用いて創造し表現する学びの中で、学習への関心や意欲を高めることができるよう、新たな端末の調達準備を進め、引き続き最適な教育環境づくりに努めてまいります。

分野別施策4.スポーツ・文化・産業
本市のアイデンティティでもあるラグビーのプロチーム「花園近鉄ライナーズ」は、リーグワンディビジョン1への返り咲きをめざして熱戦を繰り広げております。そして、「FC大阪」は2月にJ3リーグが開幕し、J2リーグ昇格への再挑戦が始まりました。創立15周年を迎える「大阪ゼロロクブルズ」も新たな布陣のもとでの戦いとなります。今後も、本市をホームタウンとしているプロチームへの応援とともに、スポーツを通じたまちづくりと、にぎわいの創出に努めてまいります。
令和9年度に開催予定の「ワールドマスターズゲームズ2027関西」の機運醸成として、生涯スポーツの意識を高めるため、これまで世界37か国85都市で開催され、参加型の国際スポーツフェスティバルとして世界有数の規模を誇る「ザ・コーポレートゲームズ」を誘致し、「マスターズ花園」や「市民スポーツの祭典」の期間にあわせて開催いたします。スポーツツーリズムをシティプロモーションとともに推進し、第2次東大阪市観光振興計画において掲げている「住んでよし、訪れてよし、稼いでよし」を実現してまいります。
令和5年度より休館しておりました、国の史跡であり重要文化財である鴻池新田会所が、令和7年中に耐震工事を終え、10月に再オープンを迎える運びとなりました。鴻池新田会所の再オープンを記念したイベントを開催しPRするとともに、入館料を無料とし、施設の利用拡大を図ってまいります。クラウドファンディングにより市内外からあたたかいご支援をいただき、再オープン時には水質が改善する弁天池とともに、地域住民の交流や文化・芸術活動、文化観光の拠点として、鴻池新田会所の役割のバージョンアップを図り、地域愛あふれる施設としてリスタートいたします。
国家プロジェクトに位置付けられております医療機器・ヘルスケアに関する国際見本市「Japan Health」が、本年は万博の開催時期とあわせて大阪で開催されます。医療・ヘルスケア分野の市内企業の技術力や製品を幅広くPRし、「モノづくりのまち東大阪」としての存在感を示すとともに、市内企業のビジネスチャンスの創出にもつなげてまいります。
行政・経済の中核機能や文化・学術施設が集積する、良好な都市環境を有する大阪・中之島において、未来医療国際拠点「中之島クロス」が昨年6月にオープンし、このたび、この拠点を運営する一般財団法人未来医療推進機構と自治体初となる連携協定を締結いたしました。本協定を通じて、関係機関とさらなる連携を深め、再生医療をはじめとする未来医療に関わる案件の事業化等について、市内企業の参画につながるよう努めてまいります。

分野別施策5.健康・福祉
すべての妊婦・子育て家庭が安心して出産・子育てができるよう、令和7年度より、母子健康手帳アプリを導入いたします。成長記録・予防接種スケジュールの管理や予防接種時のデジタル予診票の作成、産後ケアデジタルクーポン、一時預かりのオンライン申請・予約、医療機関と市のデータ連携なども今後可能となることで、利用者の利便性の向上とともに、医療機関と市の事務的な作業の効率化を図ってまいります。デジタル庁は、母子保健や予防接種、自治体の医療費助成等の業務について、関係機関や行政機関等の間で必要な情報を安全に交換できる情報連携の仕組みである「 Public Medical Hub(PMH)」を開発し、マイナンバーカードを医療費助成の受給者証として利用する実証を進めております。今後、全国レベルの展開を見据えた国の動きを注視しながら、利用者のさらなる利便性の向上に努め、子育て世帯の負担軽減に努めてまいります。
帯状疱疹は体内の水痘・帯状疱疹ウイルスによって発疹や痛みを引き起こす疾患で、まれに重症化することがありますが、予防接種による発症予防効果が認められています。令和7年度より予防接種法のB類疾病に位置付けられることから、65歳の高齢者等を対象として予防接種を開始し、ワクチンの種類に応じて補助を行います。令和7年度に対象となる約3万人に対して、個別に通知を行い、ワクチンの安全性・有効性や趣旨をご理解いただき、ご検討いただけるよう、丁寧な周知に努めてまいります。
すべての市民が、手話やろう者に対する理解を深めるため、「東大阪市みんなでトライする手話言語推進条例」を制定してから6年がたち、本市においても理解の促進と啓発に取り組んできたところです。近年、聴覚障害をテーマとしたドラマの影響もあり、手話への関心が高まっております。本年11月には、100周年記念大会となる東京2025デフリンピックが開催されます。令和6年度より649市区で構成される全国手話言語市区長会の会長市を務めている本市としましても、障害の有無に関わらず、互いの違いを認め、尊重しあう共生社会の実現をめざし、デフリンピックの機運醸成とともに、周知啓発に取り組んでまいります。

分野別施策6.都市・環境
地域公共交通につきましては、令和5年8月より実施しておりましたAIオンデマンド乗合タクシー「mobi」の社会実験から得られた知見を活かし、昨年国が規制を緩和したライドシェアと、AIオンデマンド乗合タクシーを融合させた、本市独自の新しい公共交通の社会実験を早期に実施してまいります。
環境につきましては、「2050年ゼロカーボンシティ」の実現に向け、家庭用再生可能エネルギー等の設備や事業者用の太陽光発電設備への設置補助、家庭向けの省エネ相談会や事業者向けの環境マネジメントシステムの普及促進等により、引き続き、市民や事業者の皆様の脱炭素化に向けた取り組みの支援、啓発に取り組んでまいります。
モノづくり企業においても、カーボンニュートラルを意識した事業活動を行う必要があります。省エネや脱炭素に取り組む企業の支援となる中小企業設備投資支援補助金につきましては、令和6年度予算が途中で終了したことから、令和7年度は予算を上乗せし、需要への対応を行ってまいります。
市内4か所の環境事業所と美化推進課施設の老朽化への対応と、ごみ収集業務の効率化を図るため、かねてより環境事業所再編整備事業の検討を行ってまいりました。新しい収集拠点となる2か所の(仮称)東部環境センター及び西部環境センターにつきましては、令和11年度の開設をめざし、令和7年度はPFI事業者の選定を進めてまいります。

分野別施策7.防災・治安
平成7年の1月17日に起きた阪神・淡路大震災からすでに30年がたちました。本市においても、甚大な被害が発生するかもしれない南海トラフ地震や、生駒断層帯地震が、そう遠くない未来に起こる可能性が十分にございます。自分自身や家族の安全を確保することを最優先し、防災グッズの準備や避難経路の確認、地域の防災訓練への参加など、日ごろからの防災意識を高く持ち続けることが命を守る鍵となることから、体験型の防災イベントを実施するなど、より備えの重要性を実感いただける啓発を進めてまいります。
また、ライフラインである水道施設、とりわけ老朽化した管路の更新及び耐震化をこれまで以上に進め、加えて市内最大規模である水走配水場の施設更新に向けた基本計画及び地質調査に着手し、平常時はもちろんのこと、震災時においても安定した水の供給を図ってまいります。
土砂災害対策につきましては、山麓地域の砂防堰堤整備に向けた地籍調査を実施してまいります。近年、気候変動の影響による水害の激甚化が進んでおり、流域の自治体や企業、住民なども一緒になって治水に取り組む「流域治水」という考え方を踏まえ、生駒山麓の近隣市で課題を共有しながら、府市連携のモデルケースとなるよう、取り組んでまいります。
安全・安心なまちづくりにつきましては、昨年は布施署管内で交通死亡事故数ゼロを達成いたしました。1950年に交通事故統計を発表してから初めての出来事であり、警察と連携し、市民の皆様とともにさまざまな啓発に取り組んだ成果と、チーム力の勝利であると私は思っております。この良い流れを維持すべく、スタントマンを使ったスケアードストレート方式による交通安全教室を、中学校在学中に1度は体験いただけるよう回数を増やして安全教育の強化を図ります。今後も市内3つの警察署と連携を密にしながら、市内全域で少しでも交通死亡事故をゼロに近づけるよう取り組むとともに、各種犯罪の防止に向けた啓発につきましても、引き続き根気強く訴えかけてまいります。

行財政改革について
これまで述べてまいりました、次世代への投資の加速と子どもファーストを中心とした、各般施策を着実に推進するにあたり、より一層の効率的かつ健全な行財政運営は不可欠であります。
本市においては、昭和61年度の危機的な財政状況から脱却するため、自治体の基本である市民サービスの維持向上を念頭におきながら、30年以上にわたり積極的な行財政改革に取り組んでまいりました。「行財政改革プラン2025」におきましても、「選択と集中」「持続可能な財政運営」「これからの行政運営を担う人材の確保・育成」の3つの柱を中心とした基本的方針を継承しながら、計画期間内の効果額のみならず、その先の将来を見据えた長期的な視点での成果につながる取り組みにも着手し、着実に行財政改革を推進してまいります。特に新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経て加速度的に進展した市役所DXの推進につきましては、全部局で取り組むべき重要項目として位置付け、生成AIなど新たなデジタル技術を活用し、取り組んでまいります。さらに、マイナンバーカードの活用と普及を推進し、市役所に来なくとも完結する行政手続の拡充を行い、市民の利便性の向上と、窓口業務を中心とした市役所業務の効率化を推進してまいります。
また、生産年齢人口の減少や、働き手の価値観が多様化し、市役所を取り巻く状況が大きく変化している中、行政運営を担う人材確保と育成の重要性が高まっております。新たな課題や市民ニーズに柔軟に対応できる職員の育成と組織づくりのため、人材育成基本方針を策定し、職員の資質向上と、キャリア形成の支援、働きやすい職場環境の整備を行ってまいります。
なお、国において議論されている「103万円の壁」の引き上げについて、総務省の地方財政審議会は、個人住民税の趣旨や地方財政に与える影響を配慮し、地方団体の声も聞きながら丁寧な議論を行うことが必要と言及されておりますが、今後の国の対応による、地方財政への影響が心配されており、全国市長会、全国町村会、全国知事会からも強い要望を挙げています。影響如何によっては自治体独自施策の廃止や縮小もやむなしとなる可能性は否定できず、今後の施策展開にあたりましては、このことを念頭において取り組まなければなりません。子どもファースト施策に係る次世代への投資のみならず、令和11年度以降は、(仮称)こどもセンター、(仮称)環境センター、新斎苑、新博物館等大型プロジェクトも控えております。令和7年度から始まる「行財政改革プラン2025」の期間は、全職員が財政の厳しさを覚悟して、日々の業務において常に行財政改革を意識し、不撓不屈の精神をもってチーム東大阪として取り組んでいく決意です。そして、概ね10年間のスパンで財政を考え、10年後さらに財政を好転させるには何をすれば良いかを意識し、日々実践・実行してまいります。
以上、市政運営の基本的な考え方と令和7年度に実施いたします主要な施策について申し述べました。

当初予算について
本定例会で提案いたします令和7年度当初予算の総額は、
一般会計で 2,354億8,081万9千円
特別会計で 1,316億8,058万5千円
企業会計で 464億2,301万9千円
となっております。

最後に
社会情勢が目まぐるしく変わるVUCAの時代においては、新たな価値の創出が欠かせず、それにはCo-Creation、いわゆる共に創る「共創」の時代であることを私はここ数年申し上げておりました。これと読みは同じですが、協力して創る、「協創」という、よく似たワードがあります。共に創る共創は、同じ考え、価値観を共有し、共感しあって新たな価値を創造していくことと考えます。一方、協力して創る「協創」とは、立場や考え方、価値観が異なっていても、共通の目標やゴールを見据えることができているなら、皆で協力して創り上げていくこと、それがまさに、協力して創る、「協創」である、と考えます。立場や考え方が違う者同士の対話は非常に困難ではありますが、同じ目標をめざして「協創」することは、分断や対立にエネルギーを使うことなどありません。
昨年、俳優の真田広之さんがプロデュース・主演された作品が、アメリカの優れたテレビ番組などに送られるエミー賞で過去最多の受賞を記録し、今年のゴールデングローブ賞でもノミネートされたすべての賞を受賞されました。主に英語ではない言語のドラマが作品賞を受賞したのは初めてのことで、歴史を塗り替える快挙を成し遂げた真田さんは、「先人から受け継いだ情熱と夢は海を渡り国境を越えた」「東洋と西洋が出会った夢のプロジェクトだった」「皆が協力すれば奇跡を起こすことができると教えてくれた。私たちはより良い未来を一緒に創り出すことができる」と、感動的なスピーチの中で述べられておりました。まさに海を越え、立場の違いを超え、グローバルな、協力をして創る、「協創」による偉大なチーム力の賜物だったのではないでしょうか。
令和7年度は、東大阪市第3次総合計画の折り返し地点に差し掛かる年度となります。東大阪市に携わるすべての人々とともに、今までにないチーム力で「つくる・つながる・ひびきあう ―感動創造都市 東大阪―」の実現をめざすことをあらためて胸に刻み、東大阪市のより良い未来のために堅実な一歩を踏み出してまいります。
議員各位、並びに市民の皆様、事業者の皆様におかれましては、より一層のご理解とご支援を賜りますよう、お願い申し上げまして、令和7年度の市政運営方針とさせていただきます。
令和7年度市政運営方針(令和7年第1回定例会)