平成24年度市政運営方針
本日ここに平成24年第1回定例会を迎えるにあたり、市政運営に関する私の基本的な考え方の一端を申し述べさせていただきます。
本定例会におきまして提案しております平成24年度予算は、私の市長として2期目就任後、初の通年予算であり、「活力ある東大阪の『再生』から『創造』」へ、第2期マニフェストの達成に向けた施策をスタートさせる予算と位置付けるものであります。
本市を取り巻く経済環境は、製造業の六重苦といわれる「円高」「高い法人税率」「自由貿易協定の立ち遅れ」「製造業への派遣労働禁止」「温室効果ガス排出量の25%削減」「東日本大震災後の電力不足」の影響など、日本経済の直面する課題を考えますと、先行きも含め楽観視できるものではなく、厳しい覚悟で予算編成に臨んでまいりました。その上で、新集中改革プランの着実な実行と財政規律の確保を大原則とし、とりわけ喫緊の課題である市内経済の活性化や耐震化の促進など、市民の安全安心な暮らしに直結した施策に重点化を図りました。
今後の財政運営においても、「入るを量りて、以て出ずるを為す」の考えを基本に財政規律を堅持しつつ、「活力ある東大阪の『創造』」に必要な投資は躊躇せずに進めてまいりたいと考えております。
また本年4月には、昨年成立した地域主権改革一括法に基づき、新たな事務権限が移譲されるなど、基礎自治体の責務がさらに増すことも踏まえ、市長である私のトップマネジメントを発揮し、市政改革の加速が市民の皆さんの目に映りますよう全力を尽くしてまいる所存であります。
さて、この1年を振り返りますと、私自身を含め、今もなお日本国民すべての心に焼き付いている最も大きな出来事は、昨年3月11日に発生し、多くの犠牲者を出した東日本大震災であります。
大震災発生当日に伝えられた、被災地に押し寄せる大津波の映像や、国民に多くの不安を今もなお与え続けている東京電力福島第一原子力発電所の事故には、市民の生命や財産の安全安心を託された市長として、「想定外を想定した備え」の必要性を改めて考えさせられました。
またその一方では、震災直後の被災地住民の方々の秩序を乱さず、互いを庇い合い、互いを助け合う姿が世界中の人々から称賛されましたことに、私は日本国民の一人として誇りを感じずにはいられませんでした。この「日本人の誇り」や「絆の強さ」を子孫の代にまで伝えていかなければなりません。
海外に目を向けますと、昨年は世界規模の政治・経済の大転換期を迎えた1年でありました。
昨年1月のチュニジアの「ジャスミン革命」に端を発し、エジプト、リビアなど他のアラブ諸国にまで拡大した中東の民主化運動「アラブの春」による大きな政変、政治革命の流れがありました。
一方で欧米諸国に目を移しますと、昨年の夏、アメリカにおいては、財政赤字の削減策の不十分さから、アメリカ国債の格付けが史上初めて引き下げられ、またヨーロッパでは、ギリシャの巨額財政赤字の表面化が連鎖的にユーロ圏全体の財政不安に拡大しました。そして、これら欧米諸国の信用不安に起因したアメリカドル・ユーロに対する信頼の揺るぎが、急激かつ歴史的な円高として我が国の経済にまで影響を及ぼしております。
本年2月8日の財務省の発表によりますと、この歴史的な円高や震災によるサプライチェーンの寸断などの影響を受け、昨年の我が国の貿易収支は、48年ぶりに1兆6,089億円の赤字に転落したとされております。
本市の昨年10月~12月期の市内中小企業動向調査によりますと、製造業の前年同期比の景況DIはマイナス10となっており、依然として震災前の水準にまで回復しておりません。さらに前年同期比でみた来期の見通しDIにつきましてもマイナス19となるなど、厳しい見方が強くなっております。また、雇用情勢につきましても、ハローワーク布施の昨年12月の有効求人倍率は、原数値で0.56倍となっており、全国0.77倍、大阪府の0.74倍と比較しましても、低い値となっております。
今後もなお、緊迫するイラン情勢次第では、原油価格の上昇など、我が国、そして本市の製造業にさらに深刻な影響を及ぼすことが危惧されます。また、今年行われるアメリカ、ロシア、韓国などの大統領選挙や中国の最高指導者の交代が、我が国の外交・政治・経済に与える影響にも注視する必要があります。
昨年10月に東大阪市制初の市長・市議会議員の同時選挙が行われ、私自身、再度市民の負託を得て、引き続き東大阪市長の重責を託されることとなりましたが、まず今すぐに着手すべきは歴史的な円高に苦しむ、本市の経済を支える中小企業に対する支援であります。
私は、緊急支援策の一つとして、本市中小企業の資金調達をさらに利用しやすくするため、本年1月より小規模企業融資制度における本市の預託金を1億3,000万円増額し、金融機関から中小企業への貸付利率を府下最低の0.8%にまで引き下げました。4月からは預託額をさらに増額することにより、取り扱い金融機関を拡充するなど、さらなる利便性の向上に努めてまいります。
また、新年度予算には本市のモノづくり企業の「高付加価値化」「操業環境の維持・確保」「販路拡大」などの基本的な考え方をもとにした支援施策を盛り込み、本市中小企業と市がスクラムを組み、円高という厳しい情勢の中、成長著しいアジアへの市場拡大なども視野に、国際競争力の強化に取り組んでまいります。
また、もう一つの喫緊に取り組むべき課題は、激増する生活保護費への対策であります。
バブル景気崩壊後の日本経済の低成長期への移行と、急激な高齢化率の上昇により、生活保護費が年々増加しております。とりわけ平成20年のリーマンショック以降の急激な景気後退、雇用環境の悪化により著しく増加しており、さらに憂慮すべきは、便乗するような不正受給、不正請求、貧困ビジネスなど悪質な事案も多発している現状であります。
現在の本市の保護率は全国平均を大きく上回る4%に達し、平成24年度の生活保護費の予算は約365億円にものぼり、一般会計予算総額の18.7%を占めております。
生活保護事案の増加は、単に財政面のみならず、ケースワーカーの確保など、本市の行政運営に広く影響を及ぼしていることから、私は本年1月に、生活保護行政を全庁横断的な重要課題と位置付け、生活保護行政適正化推進本部を発足させました。
今後、推進本部を中心に、被保護者への効果的な自立支援施策の実施や、医療・介護扶助の適正化、また不正受給・不正請求・貧困ビジネスなどの事案への対策強化を図り、本市の生活保護行政の適正実施を進めてまいりますとともに、生活保護制度そのものの問題点を洗い出し、市の裁量や権限の強化、あるいは財政負担のあり方など、国に対し制度の抜本的改革を訴えてまいりたいと考えております。
なお、悪質な不正受給者等に対しては大阪府警察本部との連携を強化し、刑事告訴も辞さない覚悟で取り組んでまいります。
一期目の4年間、私は選挙公約である「三つの改革」と「五つの基本政策」を市が取り組むべき市政マニフェストとして位置付け、「活力ある東大阪の『再生』」をめざし市政運営の舵を取ってまいりましたが、とりわけ「市役所を変える」ことに重点を置いた、行財政改革に邁進した4年間であったと総括しております。
単に経費を節減するだけではなく、事務事業や業務のあり方をゼロベースで点検し、民間活力の活用や職員の意識改革を進め、行政の無駄を省くとともに市民サービスの向上を図り、市民に信頼される市役所づくりを進めてまいりました。
また、カイゼン活動やPDCAサイクルの考え方を仕事に採り入れるなど、仕事のやり方そのものを変え、職員一人一人が問題意識を持ち、職務に取り組むよう努めてまいりました。
これを裏付けるように、昨年10月の選挙戦を通じて多くの市民からいただいたお話やご意見は、「東大阪市は4年間で随分と変わった」「東大阪市をもっと良くしてもらいたい」という、まさに励ましや期待の声でありました。
私はこのような市民の熱い期待の声を胸に刻み、これまでの市政改革の流れをさらに加速させ、「活力ある東大阪の『再生』から『創造』へ」、地方分権時代の未来を見越したまちづくりを実行することを、改めてここに決意いたします。
まずは「活力ある東大阪の『再生』から『創造』へ」に向けた私の戦略について数点述べさせていただきます。
活力ある東大阪の『再生』から『創造』
東大阪市版 地域分権
「活力ある東大阪の『再生』から『創造』」の第一の戦略は「東大阪市版 地域分権」の推進であります。
我が国では明治維新以来、全国が一律に中央集権システムの下、近代化と経済発展を成し遂げてまいりましたが、経済の高度成長の時代を終え、人口減少社会を迎えるにあたり、地方の多種多様なニーズに応えうる、住民本位の分権型社会に転換を図ろうとしております。
基礎自治体である本市におきましても、地域が抱える課題や地域の特性、魅力はさまざまであり、従来どおり市が決めた施策を一律に実施することが、必ずしも施策の有効性・効率性の面から最適であるとは言えません。
地域が抱える課題への対応や、地域の特性、魅力を活かしたまちづくりについては、地域の人と人とのつながりを深め、住民自らが話し合い、その企画立案から実施までの過程に参画いただくことが、より満足度の高い施策として効果を発揮するものと考えております。
地域住民の「自分たちのまちは自分たちでつくる」取り組みを行政がパートナーとして支援する「東大阪市版 地域分権」の仕組みを確立させ、地域コミュニティの再生・創造を図り、地域福祉、地域子育て、地域教育のネットワーク形成など「地域の元気づくり」に繋げてまいりたいと考えております。
住工共生のまちづくり
第二の戦略は「住工共生のまちづくり」であります。
本市の中小企業集積は、かねてより我が国の産業を支える基盤的技術の集積地であり、何物にも負けない本市の誇りのひとつであると私は考えております。しかしながら、長引く景気の低迷や、企業の市外移転等により、大きな工場が閉鎖され、跡地に住宅ゾーンが形成されるなど、いわゆる住工混在が進んできております。このような操業環境の悪化は、製造業のさらなる廃業・移転を促進し、中小企業集積の崩壊に繋がりかねないことが大きな課題となっております。このため、「(仮称)住工共生まちづくり条例」を制定し、既存の住工混在地域における環境対策の促進や、工業地域への新たな住宅開発の抑止策を講じるなど、市民の生活環境と工場の操業環境のバランスをとりながら共生していけるまちづくりを進めてまいります。
民間活力の積極的な活用
第三の戦略はPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)など、さらなる「民間活力の積極的な活用」による市民サービスの向上であります。
本市では、地方分権の流れに沿い、市民サービスの向上に資する事務につきましては、その権限の移譲を積極的に受け入れてまいりましたが、平成24年度にはパスポート業務について、市民の身近な窓口での手続きを可能とするため、新たにパスポートの申請・交付の窓口を市内に開設してまいりたいと考えております。なお、これにより新たな事務が生じますが、パスポートの申請受付や交付の窓口事務は民間事業者に委託し、市職員が携わる事務は審査や大阪府への確認など最小限にとどめ、人件費などの経費は抑制してまいりたいと考えております。
今後、地方分権の進展や少子高齢化などの社会環境の変化に伴い、基礎自治体である本市が市民サービスの維持・向上のために担うべき役割は益々増加し、多様化してまいります。私は、新たに増加する事務、あるいは既存の事務につきましても、その業務や作業の内容を点検・分析し、公務員の身分を有しておらずとも取り扱える事務については積極的に民間に任せ、市の職員は、その身分や処遇に相応しい業務に特化することにより、市民サービスの質の向上とコスト削減の両立に努め、さらには市内企業の新たなビジネスチャンスの創出や地域雇用の拡大など、地域経済の活性化へと波及させてまいりたいと考えております。
ファシリティ・マネジメント
第四の戦略は、「ファシリティ・マネジメント」の導入であります。
ファシリティ・マネジメントとは、企業の経営管理方式の一つでありますが、これを本市にあてはめますと、本市が保有する土地・建物・設備などにつきまして、単に維持・保全することのみならず、経営戦略的視点から「より良いあり方」を追求し、変化する社会環境に応じて施設サービスを最適な状態にするための総合的な市有財産の管理手法であると考えております。
本市の市有建築物につきましては、その3分の2以上が建築後30年以上経過しており、これらの耐震化や老朽化対策については、東日本大震災を教訓に市民の安全安心を考えますと、先送りできない課題となっております。しかしながら、今後さらに少子高齢化が進み、生産年齢人口が減少するなど、市税収入の大幅な増加が望めない状況では、従来どおりの手法ですべての施設を更新し、将来にわたって維持管理し続けていくことは困難であります。
そこで本市が保有する資産の維持管理手法に「ファシリティ・マネジメント」の考えを導入し、利用者のニーズ、財政負担の低減、環境負荷への配慮など、それぞれの視点のバランスを図りながら、公共施設の保有と維持管理の最適化を図り、良質な施設サービスを持続可能なものとし、次世代に引き継いでまいりたいと考えております。
積年の課題であります市民会館・永和図書館の建て替えにつきましても、周辺に点在する他の公共施設と合わせ、ファシリティ・マネジメントの考えのもと、早急に計画を策定してまいります。
また、東地域公共施設の再編につきましては、四条の家の代替となる介護老人保健施設の整備を進めますとともに、跡地の活用方法につきましても、旭町庁舎・東体育館の整備と合わせ、一定の整備方針を定め、施設の利用者や周辺住民に説明を行い、ご意見を伺いながら、決定してまいりたいと考えております。
さらに、療育センターの建て替えにつきましては、高井田障害者センターの機能と合わせた、新障害児者支援拠点施設として旧建設局庁舎跡地に建設することとし、新年度の当初予算には基本設計などにかかる予算を計上いたしております。新施設では、通園施設の定員拡充により待機児童の解消を図るとともに、診療科目の拡充や地域リハビリテーション機能などの医療的ケアを充実させるなど、ライフステージを通じて障害のある方々とその家族、そして支える人たちが適切な支援を受けられるような施設としてまいります。
以上述べました「活力ある東大阪の『再生』から『創造』」に向けた4点の戦略を着実に進め、地方分権の進展や大阪都構想など、我が国の行政システム変革の大きな流れのさらに一歩先を行く自治体運営に取り組んでまいります。
次に、平成24年度の主要な施策について、市政マニフェストにおいて実現をめざす、「五つのまちのかたち」に沿ってご説明いたします。
五つのまちのかたち
子どもたちがのびのび学習できるまち
まず、第一のまちのかたちは「子どもたちがのびのび学習できるまち」であります。
「孟母三遷(もうぼさんせん)」という教えがあります。子どもの教育には、環境を選ぶことが大切であるという故事であります。東大阪市で暮らす市民が「住み続けたい」と感じ、若い子育て世代が東大阪市に「住みたい」と思えるようなまちづくりには、子どもたちの教育環境、学習環境を整えることが重要であります。
学校協議会や地域教育協議会の活動など、地域と連携した学校運営により、開かれた学校園づくりをさらに進めるとともに、引き続き全小中学校に学力向上支援コーディネーターを配置し、組織的な学力向上の取り組みを推進してまいります。さらに、子どもたちが本物の文化芸術に接する機会をできるだけ多く設け、中学校・高等学校における部活動の充実、活性化を図るなど、家庭、地域の願いである、心豊かで、たくましく生きる力を持つ子どもたちの育成に努めてまいります。
また、学校における生活面や学習面で児童・生徒を支援するスクールヘルパーを増員するとともに、医療的ケアを必要とする児童・生徒の在籍する学校に配置するケアアシスタントを増員するなど、特別支援教育のさらなる充実を図ってまいります。
小中学校の施設の耐震化につきましては、災害時に地域住民の避難所となる屋内運動場は一昨年に完了しておりますが、校舎につきましては、残念ながら他の自治体と比べ大きく遅れをとり、耐震化を必要とする校舎が200棟余り残っております。子どもたちの安全安心を最優先に考え、また今世紀前半にも発生が懸念される東南海・南海地震に備えるため、庁内に耐震化特別チームを設け、平成27年度完了を目標に、残りの校舎の耐震化を進めてまいります。
次に、小学校の暑さ対策につきましては、これまでに空調設備のない普通教室にドライ型ミストを試験的に設置し、検証したところ、一定の効果が確認されましたことから、耐震化工事に支障のないところより順次整備してまいります。
中学校での給食につきましては、成長期にある中学生の健全な心身の育成や学校における食育の推進、また子育て支援の観点から、実施すべきと考えております。実施の手法につきましては、財政負担や学校現場での負担、教育カリキュラムへの影響なども考慮しながら、民間調理場の活用も検討してまいりたいと考えております。
安心して子育てできるまち
第二のまちのかたちは「安心して子育てできるまち」であります。
次世代を担う子どもの健全な育ちを地域全体で支援し、子どもや家庭のさまざまな状況に応じた子育てを総合的に推進してまいります。
まず、安心して就労しながら子育てができるように、保育所待機児童の解消と保育環境の維持向上を図るため、現在進めている4ヶ所の民間保育所新設に加え、新たに2ヶ所の園舎の増改築に対しても補助を行い、平成25年度には290名の入所定員を拡充してまいります。また、在宅で子育てされている家庭に向け、地域での子育て支援ネットワークの拠点として、本市5ヶ所目の子育て支援センターを楠根リージョンセンター内に設置してまいります。
さらに、本年1月に本市で発生した母親が子どもを殺傷するといったような痛ましい事件を二度と繰り返さないためにも、児童虐待に対応する組織として、新たに子どもすこやか部内に『子ども見守り課』を設置し、子どもの安全と健やかな成長を守り、そして子育てする親の心のケアにも努めてまいります。
なお、本市の総合病院を始めとする中河内医療圏の小児初期救急医療体制に対する大阪府の補助金は平成23年度をもって終了いたしますが、引き続き、八尾市、柏原市、協力医療機関と連携し、事業を継続してまいります。また、子ども医療費助成制度の通院分の拡充につきましては、大阪府の制度見直しの動向を注視しながら、実施に向け検討してまいります。
ごみのないきれいなまち
第三のまちのかたちは「ごみのないきれいなまち」であります。
「市民協働による、ごみのないきれいなまちづくりを地域から推進していきたい」という私の考えを、これからの東大阪市の地域づくりを担う若い世代の方々に是非知っていただきたいという思いで、昨年、後期基本計画の啓発活動の一環として、全26の市立中学校と日新高校を訪問し、合計約1万5,000人の生徒の皆さんに地域のまちづくりについて、環境問題などをテーマにお話をさせていただきました。
環境意識の向上を図る取り組みにつきましては、私が先頭に立ち、市行政のさまざまな折に、さまざまな手立てを講じていかなければならないと考えており、平成24年度に着工いたします成和小学校や盾津中学校の校舎増築工事においては、LED照明や太陽光発電システムなど環境配慮型事業を導入し、これらも児童・生徒の環境意識を高める教材として役立て、エコスクールを実践していきたいと考えております。
生駒山麓に広がる緑豊かな里山地域は、地域住民のふるさと意識を醸成する重要な地域資源であります。しかしながら、農家では高齢化や後継者不足など、都市近郊型農業が抱える今日的な課題により耕作放棄された農地が増加しております。耕作放棄地は、景観の悪化を招くだけでなく、ごみの不法投棄の原因ともなることから、都市農業活性化農地活用事業により、里山地域における耕作放棄地の解消に取り組み、本市の里山空間の保全に繋げてまいります。
また、道路や植え込み、耕作されていない農地などへのごみの不法投棄を抑制するとともに、未来の子どもたちが快適な環境の中で暮らし続けていくことができるよう、より多くの市民と共に環境というものを考え、対話しながら「(仮称)ごみのないきれいなまちをつくる条例」の制定作業を進め、より一層の市民意識の高揚を図ってまいります。
本市の公園や緑地等は、その大半が開設して20年以上経過し、老朽化が目立ち始めており、また昨今の高齢化や少子化などに伴い、住民の公園に対するニーズにも変化が生じております。地域の住民に、もっと愛され、親しみをもって、より多く利用される「やすらぎ交流の場」として、既成概念にとらわれない公園づくりをめざし、バリアフリー化と合わせ、計画的に再整備してまいりますとともに、公園愛護会の方々の活動をさらに積極的に支援してまいります。
防災・防犯のまち
第四のまちのかたちは「防災・防犯のまち」であります。
まず、災害に強い防災都市基盤づくりに向け、引き続き耐震基準を満たしていない木造住宅などの民間建築物の耐震化を促進してまいります。また、下水道の増補管及び学校校庭の雨水貯留施設の整備など、引き続き浸水対策事業を推進してまいります。
消防につきましては、東消防署額田出張所、西消防署長堂分署の耐震補強工事や市域北東部方面出張所の建設工事に着手いたしますほか、西消防署の建替計画の策定や、高規格救急車、消防団の屯所・車両の整備を進め、総合的な消防力を強化してまいります。
また、新たな災害時用備蓄物資として、ライフライン復旧までの代替手段として活用するLPガス用バーナーセットや、要援護者用の車いす、識別タグを避難所に配備いたしますとともに、迅速に災害時要援護者の所在確認や支援を行えるよう、新たに地図情報を組み入れた要援護者情報を地域の支援者の方々に提供するほか、聴覚障害者に配慮した情報伝達手段として、一斉送信ファクスを導入するなど、災害時の備えを充実してまいります。
次に、防犯に関しましては、地域住民の自主的な活動により街頭犯罪の抑制に効果をあげております愛ガード運動や青色防犯パトロール活動など、市民の「自分たちのまちは自分たちが守る」活動を引き続き支援しますとともに、防犯灯の設置や維持管理費に対する助成に加え、新たに自治会が設置する防犯カメラの費用に対する補助制度を創設し、街頭犯罪の抑止効果をさらに高めてまいります。
また、本年10月に施行します「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づき、新たに障害者虐待防止センターを設置し、障害者虐待の予防及び早期発見に努め、養護者に対する支援施策を講じてまいります。さらに、高齢者、児童に対する虐待やDV被害の防止対策、自殺予防対策の強化、また、より多くの市民が人権問題への理解を深めることができるよう、効果的な人権啓発・人権教育に取り組むなど、あらゆる機会を通じて「人間尊重のまちづくり」を推進してまいります。
地域が元気なまち
第五のまちのかたちは「地域が元気なまち」です。
「住みたいまち」「住み続けたいまち」となるには、市民・企業・地域が元気で、そしてそのパワーを結集させることが必要であります。地域経済の発展と市民生活の向上に重要な役割を果たしている中小企業を地域社会全体で支えていくため、「(仮称)中小企業振興条例」の制定に取り組み、市内のモノづくり企業や地域の商店街の元気づくり、そして元気な高齢者が活躍する場づくりをバックアップしてまいります。
まず、モノづくり企業の支援施策につきましては、東大阪デザインプロジェクト事業を拡充し、市内企業の技術力にデザインを結びつけ、高付加価値化を図る取り組みを通じ、製品の国際競争力の強化を支援するとともに、国内外でのプロモーションを推進してまいります。さらに、モノづくりワンストップ推進事業として新たに海外展開支援のコーディネーターを配置した窓口を設け、市内企業の海外への事業展開を支援してまいります。また、本市モノづくり企業が知的財産権を利活用することにより、製品や技術の高付加価値化を戦略的に進めるため、企業の特許取得費用に対する補助制度を新設してまいります。
商業振興施策につきましては、まちの商店街は単なる買い物場所ではなく、地域のコミュニティの創出や地域生活の拠点として大きな役割を担っております。高齢者や障害のある方が安心して買い物を楽しめる商店街づくりを支援し、高齢者や障害のある方がまちに出て、活き活きと地域社会の中で暮らせる環境づくりを進めてまいります。
さらには、高齢者が地域におけるまちづくりの主体として活躍し、高齢者自身がサポーターとなり、手助けを求める高齢者とつながり、きめ細やかな生活ニーズに応えるなど、高齢者が互いに支えあい、地域でその力を発揮できる仕組みづくりに取り組んでまいります。
おおさか東線の新駅設置につきましては、昨年3月に、関係者間で確認書を交わし、合意に至りましたが、新年度予算では、都市計画決定並びに事業認可取得の手続きに係る予算を計上しており、早期の設置実現に向け、建設を促進してまいります。
最後に、ラグビーワールドカップ2019試合会場の近鉄花園ラグビー場への誘致活動につきましては、平成22年4月に「ラグビーワールドカップ誘致室」を設置し、署名活動を始めとする誘致活動や、ラグビーの普及啓発活動に精力的に取り組んでまいりました。昨年には、子どもたちに楕円のボールに触れる機会をさらに増やすため、小学校の体育の授業にタグラグビーを取り入れ、「ラグビーのまち東大阪」のより一層の充実を図ってまいりました。さらに、年末年始に開催されました全国高等学校ラグビーフットボール大会の折には、多くの市民やラグビーファンがボランティアサポーターとして、会場の美化活動や、署名活動を進めるなど、市民が中心となって、取り組みを盛り上げてまいりました。
本年には、IRB(国際ラグビー評議会)より、試合会場に求められる施設・設備の提示が予定されていることから、全国各地の試合会場候補地の誘致活動が、さらにヒートアップしてまいります。全国の高校生ラガーの憧れの聖地「近鉄花園ラグビー場」への試合会場の誘致活動を、東大阪市民、大阪府民、そして全国のラグビーファンの皆さんのご協力により積極的に推進し、「世界に誇れるまち 東大阪」の元気を世界に発信してまいりたいと考えております。
以上、主なものに絞り込んで平成24年度の主要な施策について申し述べました。その他の平成24年度の当初予算の内容につきましては、お手元の予算書にお示しのとおりでございます。
当初予算について
今議会に提案いたします平成24年度の当初予算の総額は、
一般会計で、1,950億0,074万9千円
特別会計で、1,102億1,158万4千円
企業会計で、 618億4,910万2千円 となっております。
最後に
最後に、昨年11月27日の大阪W選挙で「大阪都構想」を掲げた松井大阪府知事、橋下大阪市長が当選され、今、大阪から国を動かし、政治、行政、そして教育の仕組みまで変えようとされています。改革がめざす先のくわしくは、未だ明らかにされてはおりませんが、東大阪、大阪、そして日本を愛し、そこに住む人々の生活をより良くし、子どもたちの未来を守り続けたいという願いから、「変えなければならない」という想いは、私も同じであります。
中小企業のまち東大阪の活性化、市民の安全安心な暮らしの確保、子どもたちの豊かな教育環境の創造など、市長として果たすべき責務は山積しておりますが、「精神一到何事か成らざらん」の言葉を胸に、市政運営に邁進してまいる所存でございます。市民の皆さん並びに議員各位におかれましては、より一層のご理解、ご協力を賜りますようお願い申し上げまして、平成24年度市政運営方針とさせていただきます。
平成24年度市政運営方針(平成24年第1回定例会)
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