腸管感染症(細菌性赤痢、コレラ、腸チフス・パラチフス)について
腸管感染症とは、細菌・ウイルスなどの病原体が口から入り腸管で増殖し下痢や腹痛をおこす病気です。腸管感染症には細菌性赤痢・コレラ・腸チフスなどがあります。腸管感染症の患者は下痢により脱水状態にならないよう水分を十分に摂取しましょう。

細菌性赤痢
経口感染する急性腸炎です。戦後しばらく全国で蔓延しましたが、衛生状態の改善とともに減少しました。現在でも世界的に蔓延しており、日本でも発展途上国からの帰国者などから患者が発生しています。

原因と感染経路
細菌性赤痢の原因菌は赤痢菌です。
感染経路は汚染された食品や生水の摂取、乳幼児が汚染されたおもちゃなどを口に含んだことによる経口感染です。
保育園や学校、福祉施設など人と人の接触が多い場所では集団感染することがあります。

症状と経過
潜伏期間は1から3日で発症し、症状は全身の倦怠感・悪寒を伴う急な発熱、下痢、腹痛、嘔吐、粘血便などです。

治療方法
細菌性赤痢の治療には抗菌薬の投与と対症療法があります。

コレラ
コレラは代表的な腸管感染症の1つです。熱帯地域や亜熱帯地域で広く発生しており国内で発生する患者の大部分が熱帯地域や亜熱帯地域からの帰国者です。

原因と感染経路
コレラの原因菌はコレラ菌です。ただし、コレラ菌には下痢を起こす原因となるコレラ毒素を産生するものとしないものがあります。感染症として扱うのはコレラ毒素を産生するコレラ菌になります。
感染経路はコレラ菌に汚染された水や食品を摂取することによる経口感染です。

症状と経過
潜伏期間は数時間から1日で軽度の下痢・嘔吐が起こります。発熱や腹痛もない場合もあり、無症状なことも少なくありません。重症の場合、コメのとぎ汁のような白色又は灰白色の水様便が大量(1日10リットルから数10リットル)に排出され、直ちに治療を行わないと脱水状態になり死亡することもあります。

治療方法
コレラの治療方法は脱水症状を改善するための補液が中心で、重症の場合は抗菌薬投与が行われる

腸チフス・パラチフス
腸チフス・パラチフスは昭和初期から戦後にかけて蔓延した代表的な感染症でしたが衛生状態の改善により国内における感染者は減少しています。現在、国内で発生している腸チフス・パラチフスの多くは流行国からの帰国者ですが、国内発生例も見られます。

原因と感染経路
腸チフスはチフス菌、パラチフスはパラチフスA菌が病原体です。
チフス菌・パラチフス菌はヒトのみに感染し、汚染された食品や水を摂取することにより経口感染します。

症状と経過
通常7日から14日の潜伏期間の後、発熱・頭痛・下痢又は便秘などの症状が現れ、まれに腸穿孔・腸出血を起こすことがあります。典型的な経過では回復まで4週間程度かかります。

治療方法
腸チフス・パラチフスの治療には抗菌薬の投与があります。

予防対策のポイント
・二次感染予防のために小まめに手を洗いましょう
・トイレの後はしっかりと手を洗いましょう。トイレは消毒をして清潔にしましょう。
・衛生状態の悪い地域では、生水・生野菜・カットフルーツなど加熱されていない食品は食べないようにしましょう
