子ども市政だより第32号 2・3面
東大阪のモノづくり
電車づくりの現場を見てみよう
市内には、高い技術力をもつモノづくり企業がたくさんあります。そこで作られた製品は日本全国や世界で大活躍しています。
では、実際のモノづくりの現場は、どんな人がどんなことをしているのでしょうか。
市内で電車を製作する「近畿車輛株式会社(稲田上町2)」と電車関連部品を製作する「株式会社excellent(稲田新町2)」、「株式会社レイマック(楠根2)」に実際の工場の様子を見せてもらいました。
どんな電車が作られているの?
近畿車輌株式会社では代表的なものとして、近畿日本鉄道株式会社の特急「しまかぜ」や「ひのとり」をはじめ、東大阪市を東西に走る路線を含めた全ての近鉄電車が作られています。そのほか、JR西日本(西日本旅客鉄道株式会社)の新幹線・特急車・通勤車や南海電気鉄道株式会社、阪神電気鉄道株式会社などの電車が作られています。また、海外では、アメリカのロサンゼルスやカタールのドーハなどでも近畿車輌株式会社で作られた電車が走っています。
このように東大阪市で作られた電車が日本だけでなく、海外でも幅広くたくさんの人に利用され、その地域の人々の生活を支えています。
電車ができるまで
電車がどうやって作られるか知っていますか。機械を使った流れ作業を想像する人も多いと思いますが、実はほとんどが人の手で作られています。重いものを運んだり、危険な作業をしたりするのは機械を使いますが、それも人の目による厳しいチェックとともに行います。モノづくりの現場では作業する人の熟練の技が必要不可欠なのです。
ここでは、電車が作られる4つの主な工場の中を見てみましょう。
1 部品工場
鉄やステンレスの板材を曲げたり、アルミを削ったりして車両を構成するほとんどの部品を製作します。
2 構体工場
部品工場で作られた部品を組み立てて車体を製作します。完成した車体の塗装も行います。
3 艤装工場
構体工場でできあがった車体にクーラーなどの電気部品やそれを動かすための配線、窓ガラス、座席など、電車として機能するために必要な部品や機器を取り付けます。
4 台車工場
部品工場で作られた部品を溶接で組み立てて台車枠を作り、モーターやブレーキ、車輪などを取り付けて完成させます。
デザイン・設計から完成品の検査も含めて通勤車では約1年~2年、特急車では約2年~3年もの時間がかかります。
完成
安全性の確認などさまざまな検査をした後、鉄道会社へ納品されます。
滅多に見られない!
貴重な瞬間を激写
深夜の大移動
電車が道路を走る⁉
工場で作られた電車はどうやって駅まで運ばれるのでしょうか。
完成した電車をトレーラーに乗せて、道路を使って運ぶ方法があります。電車のような大きい車両は深夜の時間帯にしか運ぶことができず、通れる道も決まっているため、いつどこを通るかを綿密に計画したうえで運ばれます。
もう1つの方法として、実際の線路を走らせて運ぶ方法もあります。実は、近畿車輌株式会社の工場はJRの線路につながっているのです。
東大阪ならでは
モノづくりのネットワーク
1つの電車に使われる部品の数は数万点と数えきれないほどです。その部品は近畿車輌株式会社で作るものもあれば、他の企業から納品されるものもあります。1000社を超える取引企業の中には、市内の企業も多く、これはモノづくりのまち東大阪ならではといえます。
ネットワーク1
- 株式会社excellent
- 鉄道車両の窓枠やごみ箱、車両番号板など一通りの金属部品を製作
電車部品のことならお任せあれ!
株式会社excellent 秋本社長にインタビュー
工場で作業する48人の従業員一人ひとりが日々技術力を磨き、さまざまな知識を身につけています。金属加工に関する設計やレーザー加工、曲げたり溶接したりといった一連の作業を当社工場内でできることが当社の強みだと思います。また、工場周辺にさまざまな種類の企業があり、フットワーク軽く仕事が進められるのは、モノづくりのまち東大阪ならではです。
モノづくりの仕事は、自分で作ったものを形として残すことができます。私たちが作った部品が電車という公共の乗り物となり社会貢献できる、これがモノづくり企業として働いている一番のやりがいですね。
- 現場で働く方の声(生産管理部)
- モノづくりの仕事にあこがれてこの仕事に就きました。コンピューター上で設計ができるCADというものを使って、部品の設計をしています。どうすれば他社の製品より質も効率も良く作れるかなど工夫しながら作業をしています。自分がコンピューター上で絵に描いたものが実際に形になるととてもうれしいです。
ネットワーク2
- 株式会社レイマック
- 鉄道車両の車輪やブレーキ回りなどの台車部品を主に製作
東大阪のモノづくりには若いみなさんの力が必要!
株式会社レイマック 松村社長からメッセージ
台車とは電車の下の車輪回り全体の所で、ここに少しでも欠陥があると重大な事故につながり、乗客の命に関わるとても重要な部分です。より高い安全性を求める傾向は年々強まっていますが、私たちの会社では国家資格をもった技術者が何重にもチェックをし、世界でも信頼される品質を保っています。
台車を普段注意して見る人は少ないと思いますが、当たり前に安全に電車に乗れたとき、台車部分を見て「みんなの安全を願って東大阪のおっちゃんがまじめにモノづくりしているんだな」と思ってくれたらうれしいです。
小学生のみなさんには、料理でも工作でも何でもいいからモノを作ることに興味をもってほしいです。モノづくりの仕事はがんばった分だけ成果が出て、努力を裏切らない職業だと思っています。1人でも多くの若い世代にモノづくりの喜びと充実感を味わってほしいです。
- 工場で働く野田祐希さん(製缶溶接部)
- 私は元イタリアンシェフの溶接職人です。小さいころからモノづくりが好きでした。溶接の仕事はシンプルですが、奥が深いです。難しい作業でも、努力すれば必ずできるようになります。そのときの達成感が今の私のやりがいです。
近畿車輌株式会社のみなさんへインタビュー
Q 東大阪市に工場があるからこそできることはなんですか?
A 東大阪市はモノづくり企業が多く、企業同士のつながりも強いため、電車に使う部品が集まりやすいです。また、交通の便が良いため完成した電車を運びやすい立地にあります。
Q モノづくりをするうえで大切にしていることはなんですか?
A お客様がケガをしたり、危険な目に遭ったりしないように、絶対安全を第一に、喜ばれる車両づくりを心がけています。
Q モノづくり企業として子どもたちに伝えたいことはありますか?
A みなさんの住んでいる東大阪市で電車が作られているということを知ってもらえたらうれしいです。みなさんが大人になったとき、モノづくりの仕事をしたいと思ってもらえるように、かっこいい電車を作っていきたいです。
電車づくりの現場を見てみると、さまざまな人や企業が関わりあっていることがわかりました。そこで働く人のモノづくりに対する熱い思いや誇りも伝わってきたのではないでしょうか。
今回特集した電車に限らず、市内にはすばらしい技術をもつモノづくり企業がたくさんあります。
より良いモノを作ることで、私たちの暮らしはもっと豊かにもっと便利になっていく可能性があります。
「あんなものがあればいいな」と思い描いたモノを、みなさんも自分の手で形にできる日がくるかもしれませんね。