子ども市政だより第17号 2・3面
東大阪 中小企業ががんばれるまち
東大阪市は、たくさんの中小企業があって、人やモノでにぎわう元気なまちです。
今後も東大阪が「中小企業のまち」として発展していくためには、中小企業だけががんばればいいのではありません。このまちに暮らす皆さん(市民)や市役所などが協力して中小企業を応援・支援していく必要があります。
また、東大阪市には、モノづくり工場と住宅が混在する地域があり、お互いを尊重しあいながら快適に仕事をし、また生活できる環境をつくり出すための対策が必要です。
市役所では、これらの課題を解決し、中小企業がさらに元気にがんばることのできるまちをめざして「中小企業振興条例」と「住工共生のまちづくり条例」の二つの条例をつくりました。
知っておこう!キーワード
- 条例とは?
- 地方公共団体(「東大阪市」など)が、ある事務について、自主的につくる決まりごとのこと。
- 中小企業振興とは?
- 中小企業を元気にすること、また元気になること。
地域経済をもっと元気に
中小企業振興条例
なぜこの条例ができたの?
条例にはどんなことが書かれているの?
東大阪市には、2万9,000もの企業(会社)があります。そのうち、99パーセントが中小企業です。
中小企業には、モノづくりをする工場だけでなく、商店やサービス業、流通業なども含みます。
これらの中小企業が元気になると、東大阪市の産業全体が活気づき、雇用(働くところ)が増加するなど、まちのにぎわいにつながります。
この条例は、東大阪の経済と生活を活発にし、東大阪をさらに元気にするために誕生しました。
この条例では、東大阪市の中小企業をより元気にするための基本理念(基本的な方向性や姿勢)と、そのために市役所が進めていく取組みなどが書かれています。
条例のもととなる考え方(基本理念)
中小企業が自主的に、経営面や雇用面などについて、工夫と努力をすることを基本としています。
そのうえで、中小企業、大企業、市民(皆さん)、市役所などが中小企業の大切さを理解し、それぞれの役割を果たしながら協力して中小企業振興のための対策を進めていくこと、としています。
中小企業が努めること
- 自主的な工夫と努力
-
- 経営力の強化
- 雇用(働き口)を増やす
- 人を育てる
- 地域社会への貢献
市役所の取組み
- 中小企業を元気にする対策を進める
- 費用面の対策をたてる
- 国や大阪府と協力する
- 中小企業の魅力を発信する
- 住工共生のまちづくりを進める
- 販路拡大のための支援をする
など
「モノづくりのまち」であることに誇りを
住工共生のまちづくり条例
なぜこの条例ができたの?
東大阪市には6,000を超える工場があり、“歯ブラシから人工衛星まで”何でも作れるモノづくりのまちとして全国でも有名です。
一方で、東大阪市は西日本経済の中心である大阪市と隣りあう便利なまちであるため、多くの人が生活する住宅都市でもあります。
近年は、工業地域などでも住宅が建ち、工場と住民との間で互いの快適な環境を守ることが難しくなってきました。
東大阪市が今後さらに発展していくためには、工場のモノづくり環境と、住みやすい生活環境の両方を守っていくことが大切です。そのために「住工共生のまちづくり条例」が誕生しました。
条例にはどんなことが書かれているの?
この条例では、住工共生のまちづくりについての基本理念(基本的な方向性や姿勢)と、そのために市役所が進めていく取組みなどが書かれています。また、モノづくり工場、市役所、市民(皆さん)など、それぞれの役割も示しています。
条例のもととなる考え方(基本理念)
市民(皆さん)がモノづくり工場の大切さを理解し、「誰もが安全で快適に暮らせるまち」「元気にモノづくり活動ができるまち」、そして「東大阪市が『モノづくりのまち』であることに誇りをもてるまち」の実現をめざすことを基本にしています。
実現のための取組み
市では、次のような取組みを進めていきます。
モノづくりを進める地域に住宅を建てるときのルールをつくる
- 建築主の義務=モノづくりを進める地域に住宅を建てるときは、生活におよぶ影響を減らすための対策をとる
- 土地や建物の仲介業者(※)の義務=工業地域などにある土地や住宅の買い手・借り手に対して、近くにモノづくり工場があることを説明する
※仲介業者とは、売りたい人(貸したい人)と買いたい人(借りたい人)の間に立って、うまくいくように紹介や手続きをする業者のことです。
住工共生のための取組みに補助金を交付
住宅とモノづくり工場が共生できる環境づくりのために、次のような場合は市役所から工場に対して費用(かかったお金)の一部を補助します。
- 住居地域などで製造業を営むモノづくり工場が、モノづくりを進める地域などへ移転する場合
- 工場から発生する騒音や振動から住民の生活を守るため、建物の工事などをする場合
- モノづくり工場への理解を深めてもらうために地域住民とふれあうイベントなどを行う場合
企業の取組み
親子の絆とモノづくりへの興味を深めるわくわく祭を開催(株式会社カワキタ)
5月12日、株式会社カワキタ(荒川2)でわくわく祭が行われ、120人を超える子どもたちと保護者らでにぎわいました。
このイベントは、今回で3回目。当初、河北一朗社長がビジネスを通して何か地域に貢献したいと思っていたところ、子育て中の女性社員が「子どもや夫に会社のようすを見てもらえるイベントがあったら…」と言ったのがきっかけで誕生しました。
この日は、モノづくり体験、遊びのコーナーなどがあり、会場は訪れた親子の笑顔と笑い声であふれていました。
イベントに参加した小伝茂咲輝さん(荒川小5年)は「自分の好きなけん玉など昔の遊びができて楽しかったです」と話し、友達どうしで参加した升田直希さん(荒川小3年)と茶谷友紀さん(同)は「鉛筆キャップをもらえてうれしかったです」「コップに絵を描いたり、まめつかみをしたりできて楽しかった」と話していました。
河北社長は「私も社員も地域の一員として、地域に貢献できる活動を広げていきたいです。子どもたちには、いろんなことにチャレンジし、好奇心をもってもらいたいですね。好奇心はモノづくりにつながるものがありますからね」と笑顔で話してくれました。
- 河北社長に聞く!社会の中の中小企業
- 日本の会社の99.7パーセントは中小企業です。また、中小企業で働く人口は全労働人口の70パーセントにもなります。しかし、マスコミの報道は大企業が中心で、中小企業が取り上げられるのは、苦しい内容がほとんど。中小企業の技術や開発した商品がどれだけ優れているか、そこで働く人たちがどれだけイキイキしているか、そういった明るい話題がみんなに届いたら、中小企業っておもしろい!ここで働いてみたい!と思ってもらえるのでは。
- 東大阪市でこの二つの条例ができたのはうれしいことです。ただ、このことをいかに多くの方に知ってもらい、うまく活用していくかが大切なのではないでしょうか。
相手の立場を考えて――住宅と工場の歩み寄り(東邦焼鈍株式会社)
東邦焼鈍株式会社(南荘町)では、毎日昼も夜も休むことなく鉄製品の熱処理が行われています。ここで行われる熱処理は「焼き鈍し」といい、おもに鉄を柔らかくして形を変えやすくするための作業です。熱と大きな機械を使うので、工場内はとても熱く、大きな音も出ます。
数年前に工場のすぐ裏に住宅が建つことになり、引っ越してくる住民への騒音を心配した西田佳彦社長は、外に漏れる騒音をおさえるための工事をしました。住宅側の壁や窓を分厚い特殊な壁で覆い、さらに、できるだけ音や振動が発生しないように作業そのものの見直しもしました。
南荘町のあたりは、日本で初めて伸線産業が栄えた地域です。もともと工場ばかりでしたが、今では工場の跡地にマンションや戸建住宅が並んでいます。
西田社長は「先に工場があったとはいえ、工場と住宅が共生していくためには、お互いの立場に立って考え、歩み寄っていくことが大切。将来を担う子どもたちには、モノづくりに興味をもってもらい、モノづくりのまち東大阪を伝承してほしいですね」と話していました。
モノを作るってスゴイ!!
英田北小学校の児童がモノづくり工場を見学
東大阪市内には、世界に誇れるモノづくり工場がたくさんあります。その中の一つ、フジ矢株式会社(松原2)では、切れ味抜群のペンチやニッパなどを作っています。
フジ矢のモノづくりの秘密や社長の熱意を探るため、英田北小学校5年生の児童5人が工場を訪問しました。
- 案内してくれた人
- フジ矢株式会社 野崎恭伸社長
- 工場見学に参加した人
- 5年1組 中村勇斗
- 5年2組 菊野結衣
- 5年3組 猪岡祐介
- 5年4組 長尾美優
- 5年5組 岩崎真央
切れ味を生み出すのは職人の技!
フジ矢では80人ぐらいの人が働いています。そのうち約50人が工場でモノづくりをしています。工場では、ペンチができるまでの工程の一部を見学しました。
1本の鉄からペンチが完成するまでには、全部で60もの複雑な工程があり、約2か月かかります。毎日3000丁以上のペンチを作り出すには、熟練した職人の技が必要です。
子どもたちは、社長の説明を受けながら、初めて見る特殊な機械や職人の技に見入っていました。
教えて!野崎社長
東大阪のモノづくり
モノづくり企業の社長に質問してみました。
- 長尾さん
- モノづくりを始めたのはいつですか?
- 野崎社長(以下「社長」)
- ここは、大正12年(1923年)に祖父が始めた工場です。ちょうど今年で90年ですね。
- 岩崎さん
- 東大阪では「モノづくり企業」という言葉をよく聞きますが…?
- 社長
- 東大阪にはいろんな種類のモノづくり企業があります。たとえば、うちでは作れないパッケージなどは、東大阪市内の別の企業にお願いしています。このような企業がたくさんあるので、「モノづくり企業」というのは東大阪にとって特別な言葉だと思いますね。
- 中村さん
- モノづくり企業の必要性や役割を教えてください。
- 社長
- モノがないと生活にたいへん困りますよね。また、生活を豊かにするうえでもモノは大切です。日本は、石油や鉱物などの天然資源が少ないぶん、モノづくりをがんばらないといけませんね。
- 猪岡さん
- 工場のそばには多くの住宅もありますが、企業と住民がお互いに仲良くしていくためには、どうすれば良いと思いますか?
- 社長
- お互いに思いやりをもつことだと思いますね。うちの場合だと、住宅のある側に音の出る機械を置かないようにしたり、近所の方たちと日ごろから接するようにしたりしています。良い関係づくりが大切なのではないでしょうか。
- 菊野さん
- モノづくり企業の社長さんとして、私たち小学生に伝えたいことはどんなことですか?
- 社長
- 何もないところからモノができあがる―“モノを作る”ってすごいことなんだって知ってほしいですね。いろんなアイデアを活かせることがモノづくりのおもしろさです。みんなも将来の夢のひとつにモノづくり職人を考えてくれたらうれしいですね。
市役所の担当職員から
- モノづくり支援室 本田敬祐
- 私たちは市内企業がもっと元気にモノづくりできるよう支援しています。みんなにはモノづくりのすごさや大切さを感じてもらい、みんなの住むまちが、全国でも有名なモノづくりのまちだということを覚えてほしいです。